私立中高一貫校

これからの時代を力強く生き抜く
「学び続けるLEARNERS」を育成する

品川翔英中学校・高等学校

2020年4月、男女共学化という大きな一歩を踏み出した品川翔英中学校・高等学校。校名や校訓を変えると同時に、“現場派”の柴田哲彦先生を校長に迎え、未来の学校づくりに乗り出した。今春2期目を迎え、さらなる教育改革に取り組んでいる同校。同校のめざす教育について、小野時英理事長と村上亜矢子教頭にお話をうかがった。

品川から世界へ、未来へ 「品川翔英」の名に込めた思い

小野 時英 理事長

共学化にともないさまざまな教育改革を進め、1期目から想定以上の生徒を集めた品川翔英中学校・高等学校。第2期生も中学112名、高校818名と、昨年を大幅に上回る生徒が入学している。こうした現状を小野時英理事長は「女子校のイメージを払拭できた結果」だと語る。

「本校の前身である小野学園には88年の歴史があります。創立当時は女性の教育水準がまだ低く、私の祖父母は将来女子が社会で生きていけるようにという思いで女子校を作りました。しかし今は、性別や国などあらゆる垣根を超えて、誰もが羽ばたいていける時代です。そうした時代に必要とされる教育、将来に必要な力を育む場として、従来のイメージに縛られない新しい学校をスタートさせました」

2020年、男女共学化への移行と同時に、同校は校名・校訓・校長・制服を刷新した。「品川翔英」という校名には、「品川から世界へ、未来へ、英知が飛翔する」という意味が込められている。また「自主・創造・貢献」という校訓は、これからの時代に必要な「自ら積極的に行動し、新しい価値を創造し、人や社会に還元する」人間を育てるとの決意の表れだ。さらに新たに校長に迎えた柴田哲彦先生は、これまでさまざまな学校で教育改革に取り組んできた“現場派”の教育者。その経験を生かし、教科教育の専門家をアドバイザーに起用したり、社会の一線で活躍するビジネスパーソンとの接点を増やすなど外部からの風を取り入れながら、積極的に改革を進めている。

すべての教育活動が LEARNERS育成へ収れん

村上 亜矢子 教頭

共学2期目となった今年、同校は「学び続けるLEARNERS」を育成するという教育目標を体系化し、新たな教育活動へと舵を切った。

「現代はVUCA(ブーカ)※の時代と呼ばれています。こうした先行きが不透明で、将来の予測が難しい時代を生き抜くためには、自ら学ぶ意欲を持ち、学ぶ方法を身に付けているLEARNERSであることが重要です。本校のすべての教育活動を通じて、LEARNERS育成をめざします」と村上亜矢子教頭は語る。

LEARNERSとは、「あらゆることを自分ごととして捉え、自分を律しながら、そして愉しみながら行動できる人であり、他人の意見を傾聴し、他人と協働しながら批判的な思考力を持って新たな価値を創りだし、他者や社会に尽力する人」と定義。そのLEARNERS育成のために、同校では品川翔英ディプロマポリシー7(DP7)を設定、①愉しむ力 ②主体性 ③自律性 ④協働性 ⑤批判的思考力 ⑥創造力 ⑦貢献力の7つの力を、卒業までに身に付けられるような教育の場の構築に挑んでいる。

その核となるのが中学校に導入された「Learner’s Time」で、平日1日の午後と土曜日の週6コマが当てられている。

「Learner’s Timeでは、問題解決の手法を学ぶ探究学習やプログラミング、オンライン英会話、多様性・表現力などを学ぶドラマエデュケーション、ICTを活用した教育などを行います。メインは探究学習で、学びあうスキルやアイデアを生み出すための思考発想法にも力を入れます。生徒の知的好奇心を刺激し、深い学びに結びつけることで、LEARNERSへと導いていくのです」(村上教頭)

Learner’s Time以外の授業でも、これまでのように教員から生徒へ一方的に知識を授けるのではなく、教員と生徒が互いに磨き合い、高め合う授業へと進化。グループワークなどを通じて、生徒は積極的に授業に取り組んでいるという。

  • VUCA=Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語で、変化が激しく予測困難な状態を表す。
LEARNERSは自ら学ぶ意欲を持ち、学ぶ方法を身に付けることが重要

学年担任制とメンター制の両輪で、広く深い人間関係を構築

同校の新しい取り組みには、学習面以外のものもある。クラス担任制を廃止し、学年担任制に変更したことに加え、今年度から新たにメンター制を導入したのだ。学年担任制では、教員がチームでクラスを担当するため、生徒は多くの教員と関わりを持ち、多様な価値観を知ることができる。一方メンター制は、学習面だけではなく学校生活や進路などの相談に応じてくれる教員を、半期に1度生徒が自ら選ぶ制度。教員は事前に「教員紹介シート」を作って自分を知ってもらうよう働きかけ、生徒は第3希望まで選んで提出する。希望者の多い場合は抽選になるが、今春はほぼ第2希望までで決定したという。

「メンターには優れた指導者・信頼のおける相手といった意味がありますが、本校ではそれに加えて『自律した学習者』になるために寄り添うガイドになることを意図しています。選ばれた教員と生徒には、お互いに信頼関係ができていますから、上下関係というより何でも話せる横の関係に近いと思います。また教員は選ばれたことで、生徒の信頼に応えられるようスキルアップ意識が強まる。教員自身も『学び続けるLEARNERS』であることを見せることが、生徒のいい刺激になっていると思います。学年担任制での広い関わりと、メンター制での深い関わりが両輪となって支える仕組みで、生徒のメンタル面を支え、成長を見守りたいと考えています」と村上亜矢子教頭は語る。メンタークラスも定期開催しており、クラス、メンタークラス、部活動、家庭といくつもの居場所ができることで、生徒は安心して自分をさらけ出し、思い切ったチャレンジができる。

「自己肯定感が高まり、教科学習にも良い影響を与えると考えています」(村上教頭)

また定期テストをなくし、よりサイクルの短い学習定着確認テストを数多く実施。学びを“スモールステップ化”して一人ひとりの学習到達度をきめ細かく把握するとともに、生徒自身が主体的・自律的に学習に取り組めるようにしている。単元単位でしっかり結果が出せている生徒は、上位の課題に取り組んでより学びを深めることもできるし、定期テスト前のように試験休みがないので、部活などのアクティビティが止まらないというメリットもある。一方で学期に1回は全国模試を受験し、学習の定着度や自分のレベルを確認、進路への動機付けにもつなげている。

他にも授業中のコミュニケーション、積極性、意欲、協働する力といった、これまでは評価しにくかった非認知能力を測るために学校独自のルーブリックを導入したり、生徒の学力レベルや学習ペースにあった学びをICTで支援する個別最適化学習を行ったりするなど、同校では「LEARNERS」育成のためのさまざまな取り組みを進めている。

生徒の自己実現のガイドとしての役割を担うメンター
ICT教育では、生徒の自己調整、個別最適化学習をアプリで支援するなど、LEARNERS育成のためのさまざまな取り組みを推進

自由度の高い新カリキュラムで、生徒が本当にやりたい学びを実現

さらに同校では2022年度から、新カリキュラムを導入する。高1から卒業必修単位(74単位)を先行的に履修し、高2以降に自由に選択できる時間を多く設けるもので、高2・高3では自由選択科目(品川翔英ゼミ)を幅広く展開。進路に沿って自由に効率的に学ぶことができる。

「新カリキュラム導入の目的は、生徒が本当にやりたい学びを実現すること。生徒が自由に教科を選択し、時間割を作成する。大学のような学びが可能です」(村上教頭)

特に高3では、文系数学演習、東大数学、理工学部物理、最難関大学古典演習、難関大学英語長文読解など、受験を意識した講座も予定しており、難関大学進学に向けたサポートにも力を入れる。

また放課後の学習の場として、放課後支援センター(ラーニングセンター)を設置した。センターには専門スタッフが常駐するとともに、AIによる学習課題配信を行っており、質問にも随時対応できる環境を用意している。平日15時30分から19時まで、オンラインでは21時まで質問できる体制が整えられており、クラブ活動後にセンターで学ぶことも可能だ。加えて長期休暇中にメンターウィークを設定。春夏冬にある長期休暇中の3週間を使い、第1期=メンターとともに学習計画を立て、自学自習のペースをつかむ、第2期=開講されるゼミのなかから必要な学びを選択して受講する、第3期=2期の学び+学ぶ意欲を刺激する校外での学び(スタディーツアー)で構成されている。

「ラーニングセンターとメンターウィークを通して、生徒は自分で学習計画を立てて実行する自己調整学習の力と、大学受験を見据えた高い学力を習得することができます。講座の合間に週1回程度のメンターとの面談を行うので、学びの結果を自己省察することができ、PDS(Plan→Do→See)サイクルを回していける。毎日開設しているラーニングセンターでの学びで自律学習し、メンターウィークで自らの学習を調整・発展させられると考えています」(村上教頭)

生徒自身が目標や学習計画を立て、自分自身を律しながら学びと向き合う。中高の6年間、そうした学びを積み上げることで、難関大学合格や、社会で通用する“生きるための力”を身に付けていく。それこそが同校がめざす“自律する学習者=学び続けるLEARNERS”なのだ。

「お預かりした生徒たちをしっかり育てなければという責任の大きさを感じています」という小野理事長は、新生・品川翔英を「楽しい学校」にしたいと語る。

「学校は勉強するだけの場所ではなく、部活動や行事、委員会など、勉強以外の活動も含めて学校教育です。教員と生徒が助け合い、認め合ってよい関係を築き、よりよい学びの場となるよう、これから一層取り組んでいこうと思っています」

2023年3月には現在の本校舎を建て壊し、新校舎が完成予定だ。同校のさらなる進化を期待したい。