私立中高一貫校

道徳教育と国際教育を重視。「人間力」を持つリーダーを育てる

江戸川学園取手中・高等学校

グローバルに活躍できる人材の育成をめざす江戸川学園取手中・高等学校では近年、海外研修を充実させ、生徒に国際的な視野を広げる場を提供してきた。併せて、3コース制を導入して目標を具体化。大学合格実績も好調だ。根幹にある「心の教育」という同校の学びの特色について、今春校長に就任した山本宏之先生に聞いた。

3コース制で目標を明確化 大学合格実績で好調が続く

山本 宏之 校長

「心豊かなリーダーの育成」を教育理念に掲げ、国際社会に貢献できる人材の育成に取り組んでいる江戸川学園取手中・高等学校。茨城県内だけでなく、東京、千葉、埼玉など県外からも多くの生徒が通う進学校だ。2021年度の大学入試では、筑波大学医学群医学類に7名が合格したのをはじめ、国公私立の医学部医学科に過去最多の111名が合格を果たした。医学部以外でも東京大学に5名、東京工業大学に4名、早慶上理に200名と素晴らしい合格実績を誇る。

その背景には、生徒が自分の目標や適性に合わせて選べるコース制がある。2016年度からは、高校に設置されていた「東大」、「医科」、「難関大」の3コースを中等部にも拡充。それぞれ「東大ジュニア」、「医科ジュニア」、「難関大ジュニア」コースとして、中高6年間の一貫教育を実践している。

「早期から将来の夢や目標を具体的にイメージしながら真剣に努力する姿勢を育むために、中学入学時からコース制を敷きました。また、今後の大学入試で求められるのは人間力です。『人間教育』には中学から時間をかけて経験を積む必要があると考えています」と校長の山本宏之先生は話す。

中等部のカリキュラムは基本的に3コース共通だが、課外授業などに違いがある。医学部医学科への進学をめざす医科ジュニアコースでは、現役医師による「医科講話」を受講することで、医師という職業や現場の課題などについて早くから触れることができる。東大ジュニアコースでは、中1から東大キャンパスツアーを実施。東大に進学した先輩の話を聞くプログラムなどと合わせて、興味・関心の幅を広げている。進路選択の幅が広く、自由度が高い難関大ジュニアコースでは、生徒それぞれが得意分野で活躍。自分で取り組んだ研究を学会で発表する生徒や、論文で賞を受ける生徒など、多方面で成果を出している。

高校に進むと、コースごとに特色あるカリキュラムに発展。より具体的にそれぞれの進路実現をめざす仕組みが整っている。たとえば医科コースには医療問題などを協働で学習する学校設定科目「メディカルサイエンス」や「一日医師体験」、「病院見学ツアー」といった独自のプログラムがある。こうしたプログラムの充実も医学部合格者を大幅に増やしている要因だろう。

「世界に挑め」をスローガンに 欧米やアジアでの研修を充実

世界最前端医学の研究に触れることができる「アメリカ・メディカル・ツアー」

グローバル人材を育てるために、英語圏からカンボジアやベトナムなどのアジア圏まで広範囲の海外研修を実施しているのも同校の特徴で、「世界に挑め」をスローガンに、多彩な国際プログラムを提供している。2013年開始の「アメリカ・アカデミックツアー」では、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などを訪問して各分野の専門家の講義に参加。最新のテクノロジーに触れる。

2019年には医学部進学をめざす生徒を対象に、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)での「アメリカ・メディカル・ツアー」がスタートした。「医療現場にも国際化の波が訪れています。国際社会で活躍する医師になるには、世界最先端の医療が行われているアメリカの医療事情を肌で感じることが極めて有意義と考えました」と山本先生は話す。現地では学生宿舎に滞在し、UCSDの学生と一緒にキャンパスツアーに参加。メディカルスクールを案内してもらうなどの国際交流に加えて、医学部教授による特別医療講話や研究所の見学、医学研究者とのディスカッションなど医療に特化した研修を行っている。最先端の医療技術研修や同校の卒業生を含む現地の医療関係者の活躍ぶりを目にした生徒たちは大いにモチベーションを高めるという。

SDGsをテーマにアジア各国で貧困や飢餓について学ぶ研修も始まっている。「SDGsスタディーツアー in カンボジア・ベトナム」と題したこの研修は、JICAなどとも連携し主体的に学んでいく課題発見型のプログラムだ。一昨年のツアーでは、カンボジアに1週間滞在。小児病院や孤児院の訪問、ベトナム戦争の枯れ葉剤の散布被害を受けたグエン・ドク氏との懇談会などを通じて、世界の抱える課題に向き合った。参加した生徒たちは現地での活動を通じて高いレベルの問題意識を芽生えさせたそうだ。

今後も中3・高1を対象に3カ月間のオーストラリア中期留学を導入するなど、世界を視野に入れたプログラムの一層の充実を図る。コロナ禍の影響で休止中のものもあるが、代替プログラムなどを用意するなど意欲的な生徒を積極的に応援し続けている。

現地の小児病院や孤児院の見学などを通じて、発展途上国の現状を学ぶ「SDGsスタディーツアー in カンボジア・ベトナム」

「心力・学力・体力」を育み 生徒の人間的成長を支える

アフタースクールは生徒が主体的に学び、伸びようとする芽を存分に伸ばすために開講(写真はイベント系「模擬国連」)

コース制による明確な学習指導と進路指導、海外研修などの先進的な取り組みだけでなく、人間力につながる心の教育にも力を入れている。道徳の授業とホームルームの時間を利用して、校長や副校長、ベテランの教師が講話を行う。クラスでの話し合いや意見発表に発展させることで、社会との関りや学校という集団生活を通して道徳的価値を深める機会にしている。「道徳を通じて心の『かたち』をつくり、多様な文化や価値観に触れることで世界型人材になりえます」と山本先生は話す。「心力」「学力」「体力」の三位一体の教育を重視するのはそのためだ。

学習面での取り組みでは、2018年に始まった「アフタースクール」が好評だ。これは、生徒の視野を広げ、学習意欲を高めるため、放課後に自由選択できる講座で、学習系から実験系、芸術系、アクティビティー系まで9系統100を超えるジャンルが揃っている。「学年の枠を超えて学べる講座もあります。生徒たちは主体的に講座を選ぶことで、個性を伸ばしながら積極性を養っています」と山本先生は話す。教育活動のあらゆる場面で、人としての成長を支え、豊かな人間性を育む工夫がされているといえそうだ。

文武両道を掲げ、クラブや同好会の活動も盛ん。学校行事にも全力で取り組むのが江戸川学園取手の校風でもある。山本先生は「本校には道徳教育と多彩なプログラム、実践的カリキュラムを通して生徒一人ひとりの意欲や努力を引き出す環境が整っています。入学時点では目標に遠い生徒でも、本人のやる気次第で東大や医学部をめざすチャンスは大いに広がる。私たちはそれを精いっぱい応援します」と締めくくった。