WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

主体性を育む教育手法で社会と「共創」する

玉川学園中学部・高等部

幼稚園から大学院までワンキャンパスでの一貫教育に定評がある玉川学園。中学部・高等部は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)∗1やスーパーグローバルハイスクール(SGH)∗2に指定され、国際バカロレア(IB)プログラムも備えた、多層的な教育プログラムを展開している。とくにSSHは3期11年目に入り、より意欲的な試みにも挑戦している。

国際バカロレア(IB)クラスでは玉川学園にいながら海外留学しているような環境で教育を受けられる

創立から続く「自由研究」で探究的な自律学習を促す

玉川学園中学部・高等部は、2008年度から3期連続してSSHに指定されている。2013年度からの2期目では、「国際バカロレア教育を参考にした創造力と批判的思考能力を育成する学び」をテーマに、課題研究に力を入れてきた。課題研究は、創立当初から続く「自由研究」という名称の授業を中心に構成されている。7・8年生(中学1・2年生)は教科発展型の自由研究と位置付けられ、各教科が授業で扱う内容をより掘り下げるようなテーマを各自が考え、1年間かけて研究し、発表を行っている。

9年生(中学3年生)では、その自由研究が「学びの技」という授業に切り替わる。文献の探し方や調べ方からはじめ、引用や論文の構成まで含めた、論文の書き方を指導する教育プログラムだ。論文を執筆することで、文献を批判的に捉える力や、自らの意見を分かりやすく伝えて発表する力を習得させようというわけだ。

そのトレーニングを経た上で、10年生(高校1年生)からは再び自由研究に取り組む。これは進路選択にもつながる本格的な課題探究型自由研究ともいうべきもので、人文科学、社会科学、理学工学、教育、芸術の5つの分野から、自分が興味を持つ分野を選び、教員と共にテーマを決め、2年半かけて探究活動を行う。最終的に6000字の論文にまとめる前に、何度も発表する機会が用意され、プレゼン能力も身に付けていく。大学におけるゼミや卒業論文にも相当するプログラムといえる。

授業の中にも、SSHのプログラムは散りばめられている。たとえば、科学に関する話題を扱った文章で論理的な読解力を高め、科学的な素養と国語力を同時に学べる「理系現代文」は、理科と国語の教員が協働して教える教科を超えた授業だ。また、科学的な論文には欠かせないデータ処理に関しても、「データサイエンス」という統計学を8年生(中学2年生)の数学の授業に取り入れている。ほかにも「SSHリサーチ脳科学」や「SSHサンゴ研究」など、専門家からの直接指導の機会も数多く用意されている。

「SSH生徒研究発表会」において奨励賞を受賞
学びの技のポスターセッションではプレゼンスキルを養う

「振り返り」を言語化するワークシートを新たに導入

SSH3期目の2018年度からは、2期で獲得を目指した「創造力」「批判的思考力」に、「主体性」の涵養も盛り込む。主体的な学びが、社会の発展に寄与できる能力として開花するように、「社会との共創」をテーマに掲げた。

そのため、高1からの自由研究に「リフレクションアウトカムシート」を導入する。自由研究を通して、生徒は、フィールドでの体験や、文献などを通して探究活動、グループで学び合いや議論、発表や質疑応答など、多彩な経験を積む。そうした経験を定期的に振り返り、自分は何を考え、どう感じたのか、どんな変化があったのかなどを記入するシートだ。教員との面談時などに、自分の強みや弱みをはっきりさせ、同時に自分が望む進路や将来の目標へとつなげられるようなツールとして使うことを想定している。今年度は、SSH関連の自由研究で活用するが、2年目からはすべての自由研究で使う計画だ。

未来に目を向けるプログラムも用意する。それが「SSHサイエンスキャリア講座」だ。高校で学ぶ理科の科目が、世の中とどうつながっているのか、高校生には分かりづらい。そこで、昼休みを利用して、学外の研究者などに高校の勉強との関係を話してもらう試みだ。また、この試みは講演だけでなく講演者の研究所に訪問しアドバイスを受けたりと、発展性のあるプログラムだ。SSH指定期間11年目を迎えた玉川学園。「社会との共創」を実現させる取組が始まる。

「日本学生科学賞」東京都大会において最優秀賞を受賞
お話を伺った先生方(左から) 伊部敏之中学部長・長谷部啓高等部長・今井航SSH主任