WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

人生を切り拓く「徳才兼備」の女性を育成

三輪田学園中学校・高等学校

豊かな人間性と高い学力を併せ持つ「徳才兼備」の女性を育てる教育に力を注いできた三輪田学園中学校・高等学校。古くから読書教育や道徳教育に力を注ぎ、近年は理系学部への進学にも高い実績を残すなど、女子教育の長い伝統の中で練り上げられた独自のカリキュラムが注目を集めている。

長い歴史を誇る「読書」の授業 中3では卒業論文を作成

創立131年を誇る三輪田学園の教育の中で、特筆すべき取り組みの一つが読書の授業だ。中1の国語で行われている週1コマの「国語読書」と、中3の社会(公民)で行われている週1コマの「社会科読書」は、40年以上の歴史がある。「社会科読書」は最終的に、中学生活の集大成ともいえる卒業論文へとつながっていく。

「社会科読書」では、まず社会科の先生が「人権問題」「戦争」「環境問題」「ボランティア」など、生徒が普段は手にとらないような分野の書籍を選び、4ブロックに分けてリスト化する。生徒はそのリストの各ブロックから最低1冊、計4冊以上を選んで1学期と夏休みを使って読み、レポートを提出する。レポートは単なる感想文ではなく、本を読むことで知識を得て思考し、探究を深められる形式で構成される。

2学期以降は、最も興味のあるブロックから1テーマを選択し、冬休みと3学期を使って卒業論文をまとめていく。中学生にとって、論文を書くという作業はハードルが高い。そのため、社会科の先生がマンツーマンで指導をしながら、生徒たちのテーマ選定や執筆をサポートする。論文が完成した後はポスターセッションを行い、同級生や保護者、教員に自分の研究成果を発表する。論文の作成を通じて問題意識を深め、それが将来の職業選択につながっていく生徒も多い。

約5万3,000冊の蔵書を誇る図書室。床暖房を完備するなど、読書に集中する上で最適な環境が整えられている
図書館内には、自習用の机も多数配置。受験を控えた高3生は、授業の空き時間などにも利用している

「だれとでもつながることができる女性」の育成を目指す

AIの発達が目覚ましい今日。そんな時代だからこそ、同校では「人と人のつながり」が大切だと考えている。そうした理念の下、「だれとでもつなることができる女性」を目指し、多様な取り組みが展開されている。

その一つが、近隣大学が中心となって取り組んでいる「外濠市民塾」への参加だ。生徒たちは、大学教授や大学生、近隣住民などと共に活動することを通じて、コミュニケーション力や社会性を身に付けていく。この活動を通じ、積極的に自分の意見を言えるようになる生徒も多いという。

もう一つの目玉は、世界の人々とつながることを目指した英語教育だ。入学後は中1からしっかりと基礎固めを行うため、小テストで理解度を確認しながら次の単元へ進んでいく。また、4技能をバランス良く伸ばすことを目指し、「聞く」「読む」のインプットだけでなく、「話す」「書く」のアウトプットにも力を注ぐ。ショートエッセイの執筆を通じて論理的な英語力を伸ばすと同時に、中2から始まる英会話の授業で英語でのスピーチやプレゼンテーションにも取り組む。こうした訓練を繰り返すことで、恥ずかしがり屋の生徒も人前で堂々と発表できるようになると湯原先生は言う。

英語教育は、課外学習も充実している。中2は全員が「イングリッシュキャンプ」に参加し、国内の施設でネイティブ教師と英語漬けの3日間を過ごす。また、希望者はカナダへの語学研修や国際教養大学(秋田県)で行われる「イングリッシュビレッジ」への参加もできる。

中学教頭の湯原弘子先生(左)と入試広報室長の塩見牧雄先生。「これからの女性に必要なのは、自分の意見を持って自立すること」と口をそろえる

女子に適した学習指導で約4割が理系学部へ進学

進学面で注目すべきは、全生徒の約4割が理系学部(主に医歯薬系、看護系)に進学している点だ。この傾向について同校の中学教頭である湯原弘子先生は、二つの要因があるのではないかと分析する。

一つ目は、同校が力を注ぐ道徳教育の影響だ。道徳では主として「平和」「命の大切さ」「自立」などのテーマを取り上げており、こうしたテーマを深く掘り下げる中で、医歯薬・看護分野に興味を持つ生徒が増えるという。また、道徳の授業の一環として、中2と高1で、全員がボランティア活動に参加するが、ボランティア先に病院を選ぶ生徒も多い。そうした活動を通じて、医歯薬・看護分野への進路を志す生徒が多いという。

二つ目は、同校が独自の工夫で築き上げてきた“女子向き”の教科指導だ。コツコツと積み上げることを得意とする女子の特性を考慮し、数学は基礎が分かるまでじっくりと指導が行われる。分からないまま置いていかれる心配がないため、生徒たちは着実に力を高めることができる。

理科に関しては、地学、化学、生物、物理の4分野別に実験室を完備し、実験の授業は中学3年間で100回以上にも及ぶ。アジやマウスの解剖、ウニの受精など内容も本格的で、プラネタリウムで天体の動きを観れる部屋もある。自身の目で見て納得することで、着実に学習を深めていけるのが女子の特性だと湯原先生は言う。

化学実験室内にあるドラフトチャンバー(局所排気装置)。充実した設備の数々で、より本格的な実験を行うことができる
プラネタリウム。天体望遠鏡も数台を配備している

現役大学合格率は9割 「生き方指導」を軸にした進路指導

例年、同校の卒業生はそのほとんどが大学へ進学し、約9割が現役合格を果たしている。とはいえ、同校の進路指導は、進学実績を伸ばすことにとらわれていない。「受験は団体戦」を合言葉に、進路指導室長、高3の担任が一丸となって、生徒一人一人の興味や適性に沿った進路選択を全面的にバックアップしている。

指導の基本は、女性として「どのように社会へ出て、どのように生きたいか」を生徒によく考えさせること。志望先の提案は、そうした方針を土台として、一人一人と面談をしながら丁寧に行われる。生徒の興味関心、適性、学力はもちろん、時には性格面を考慮し、「合格圏内にある大学を最初に受験すれば、次は自信を持って挑める」など入試の戦略プランも含めてアドバイスをする。

「人生の岐路に立ったとき、困ったことが起きたときに『エネルギーをチャージするために先生の顔を見に来ました』と言って学校を訪れる卒業生が少なくありません。ある卒業生は『三輪田学園は私の北極星です』と言ってくれました」と塩見先生。同校のきめ細やかな進路指導は、生徒たちが確かな職業観に基づき人生を設計していく上で、大きな支えとなっている。

屋内温水プールを完備。プールサイドには床暖房、更衣室には大型ドライヤーも完備しているので女子生徒には安心