WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

ホンモノ、体験を重視した教育で
未来への扉を開く

玉川学園中学部・高等部

幼稚園から大学院まで、ワンキャンパスに集まる玉川学園。「全人教育」を教育理念とする玉川学園中学部・高等部では、文部科学省の定める学習指導要領に則った教育プログラム(一般クラス)と、国際バカロレア機構(IBO)が認定するIBプログラム(IBクラス)の2つの教育プログラムを実践している。それぞれの特長について、先生方にお話をうかがった。

中学部長 中西 郭弘 先生

深み・丸みのある大人になるために-経験重視の教育

61万㎡の広大なキャンパスに、幼稚園から大学・大学院までの児童・生徒・学生が集う。1929(昭和4)年の創立以来、玉川学園は「全人教育」を教育理念とし、それを実現するために12の教育信条を掲げ、ホンモノに触れる教育を実践してきた。2006年より従来の幼稚部から高等部までを一つの学校としてとらえる玉川学園一貫教育をスタート。子どもたちの心と身体の発達段階を踏まえ、教育効果を考慮して幼稚部(年少~年長)、1~5年生、6~12年生という枠組みで教育活動を行っている。また2008年からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、最先端の理数教育の実践に取り組む一方、教科横断的な学びである「STEAM教育」を導入、より創造的な学びに取り組んでいる。

中学教育で特に重視しているのは「経験」だ。中学部長の中西郭弘先生は、中学部の目標として2つのポイントを挙げる。1つは“触れて・感じて・表現する”こと。

「深みのある大人になるために、五感を使う指導を意識しています。実際に体験させること、多くの経験を積ませることが、子どもたちの学習意欲を向上させ、本当の学力を高めることにつながる。加えて独自の感性や探究心、人間としての教養や品格、コミュニケーション能力など、教科学習だけでは得られない人間性の素地を育んでいます」(中西先生)

その現れの一つが探究型学習である学びの技と自由研究だ。7・8年生で興味・関心を伸ばす教科発展型の自由研究に取り組み、9年生では年間60時間をかけて「学びの技」を学習。課題解決に向けたノウハウや論文作成・プレゼンテーションのために必要なスキルを身に付ける。10年生からは、さまざまな分野から自分の興味・関心に沿ってテーマを決め、自発的に研究に取り組む。

「自由研究は教科横断型の学びであり、『みんなで協力して何かをする』ための土台にもなります。社会の出来事に対して自分はどう考えるか、どうアンテナを立てて情報を集めるのか、自らの考えをどう表現するかなど、探究型の学びを通して自分の中の引き出しを増やし、それぞれの夢の実現を目指してほしいと考えています」

もう一つの目標が、丸みのある大人になるための“玉川しぐさ”。

「相手のことを考えられること。そして社会全体を考え、粋な立ち居振る舞いができることを“玉川しぐさ”と呼んでいます。これからの社会で生きるための力として、ぜひ身に付けてほしいですね」

オンラインでこそ出来ることに取り組んでいく。身近にどんなプラスチックがあるか、家の中にあるプラスチック製品を持ってくるように言う先生

一画多い「夢」に込められた想い

創立以来の教育信条の一つに、国際教育がある。同校は2005年、日本で初めてラウンドスクエア(55カ国220校以上のメンバー校を持つ私立学校連盟)の正式メンバー校となり、真の国際人を育成するための英語教育『ELF(English as a Lingua Franca)プログラム』を開発・スタートさせた。また年間204名の生徒を海外に派遣するとともに、135名の海外の生徒を受け入れたり、8年生の約75%が海外研修に参加する(2019年度実績)等、世界に触れる機会を用意し国際感覚に磨きをかけることに取り組んできた。

「コロナ禍で海外との交流が難しくなりましたが、世界標準の教育の実践という姿勢は変わりません。授業以外にもさまざまな機会を利用し、国際感覚を身に付けられるよう工夫しています」(中西先生)

また正規の授業に加え、放課後希望者を対象にした『玉川学園延長教育プログラム(ES)』も開始。自学自習の場「SH(Study Hall)」と、日本舞踊やチアダンス、英検®準2級対策などの「講座」という2種類のプログラムを用意し、自由に組み合わせて受講できる。

「単なる子育て支援にとどまらず、今後予想される時代の変化に対応する力や、大学の学修に必要な資質・能力を身に付ける場と位置づけています」

現在も新規講座開講の検討が進んでおり、新たな学びの展開が期待されている。

「創立者・小原國芳が生涯最も多く画いた書の一つが『夢』。この夢の文字は、“夕”の部分が一画多くなっており、『枠を超えるような大きな夢、そして多くの夢を持ってほしい』という願いが込められています。私たちはその思いを継承し、一画に託された重みをかみしめながら、生徒たちにいろいろな夢を持たせるための学びを実践。ホンモノに触れる学びを通してやりたいことを見つけ、将来につなげてほしいと願っています」と、中西先生は力強く語る。

IBプログラムでの学びを通し、多角的・客観的な視点からの判断力を養う

教育部長(IB担当) ユーリカー ウィリアム 先生

一方玉川学園では2007年、世界で活躍できる国際的な視野を持つ人材を育てることを目指す「国際バカロレア(IB)プログラム」を導入。2009年3月に11~16歳対象のMYP(ミドル・イヤーズ・プログラム)、2010年7月に16〜19歳対象のDP(ディプロマ・プログラム)の認定を受け、IBスクールとしての教育活動を始めた。IBプログラムは、世界159以上の国・地域で約5,500校(2021年3月時点)が認定を受けており、卒業時には日本の高等学校卒業資格に加えて世界90カ国の大学で出願資格として認められているIBディプロマ資格の両方を取得できる。同校は首都圏唯一、MYP、DPを英語で提供できる学校で、すでに100人以上の卒業生が国内外の大学に進学し、自らの道を生き生きと歩んでいる。

2021年度からは6年生からMYPを開始。IB準備教育として、2016年4月より幼稚部生および小学1~5年生を対象としたバイリンガル教育「BLES(Bilingual Elementary School)プログラム」もスタートしており、IBクラスはBLESプログラムで学んだ児童や、国内外の小学校・インターナショナルスクールで学んだ児童を受け入れ、さらなるレベルアップに取り組んでいく。

「玉川学園が教育理念の中心としている全人教育はIBの教育方針と一致しています。またIBのめざす学習者像と玉川学園の12の教育信条にも共通点が多く、これを融合させることで、グローバル社会で必要とされるスキルや広い視野を身に付け、世界で活躍できる真のグローバルリーダーを育成できると考えています」と、教育部長(IB担当)のユーリカー ウィリアム先生は、IBプログラム導入の経緯をこのように話す。

授業の特徴は国語・音楽・保健体育・技術家庭・中国語を除くすべての授業が英語で行われること。また評価においては、全学年・教科ごとに「コミュニケーション」「批判的思考」「振り返り」などの項目について評価する点が日本の教育とは大きく異なる。ちなみに、IB認定を受けるためには定められた環境を整えなければならず、今回6年生からのクラスになったことで、教室や図書館など設備面にも変更が加えられたという。

「IBクラスは1クラス最大25名で、探究心を育むことを目的とした生徒中心の授業を意識しています。グループ学習も多く取り入れており、なごやかな雰囲気のなか授業が進みます。英語を初めて学ぶという子どももおり、入学後に英語学習経験のある子どもたちと一緒に学ぶことで刺激を受け、大きく英語力を伸ばしています。またコロナ禍でも、情報機器を活用して海外の学校と交流するなどの試みも行っており、国際教育の機会はむしろ広がったとのではないかと思います」(ユーリカー先生)

「さまざまな学校行事のある日本の学校と、英語で学ぶインターナショナルスクール。玉川学園のIBクラスはそれぞれの“いいとこどり”をした、第三の選択肢でありたい」とユーリカー先生は言う。一層進化するIBクラスの今後に期待したい。

IBクラスは25名程度の少人数で行われ、授業形式はディスカッションがメイン
理科の授業も英語で行われ、全学年BYODを実施、1人1台パソコンを持っている
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