WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

感動と体験を成長の土台に、 次世代のグローバルリーダーを育む

八雲学園中学校高等学校

2018年4月に伝統ある女子校から共学校へと移行した八雲学園中学校高等学校。その1期生は高1になり、男女が共に認め合い、リスペクトし合う新たな校風が根付きつつある。創立時から重視するグローバル教育はコロナ禍にあっても進化を続ける。感動と体験を大切にしながら次世代のグローバルリーダーを育む同校の教育ついて、校長の近藤彰郎先生に伺った。

校長 近藤彰郎先生

共学化から4年目を迎え、より充実した教育環境に

1938年に八雲高等女学校として創立された八雲学園中学校高等学校が男女共学校となって4年目を迎えた。80年以上にわたる伝統と教育理念を継承する一方、「グローバル教育」「進路指導」「文化体験」「チューター(学習アドバイザー)」を特色とする独自の教育で次世代のグローバルリーダーを育てている。

共学1期生は高1になり、すでに中高4学年で男女の生徒が共に学んでいる。校長の近藤彰郎先生は「女子校として培ってきた伝統に男子生徒もなじんで存在感を発揮してくれています。人に優しく、弱い者を助けるナイト(騎士)の精神を持つ男子を育てていきたい」と話す。共学校としての知名度も浸透し、今春入学した中1生は男女の割合がほぼ半々。あらゆる場面で男子と女子が互いの違いを認め合い、リスペクトし合える環境づくりを意識しているという。

共学化に際して一新した中高6年間のカリキュラムでは、2年間ずつの3ステージ制を導入。中1・2で基礎学力を養い、中3・高1で海外研修や留学プログラムを体験し、高2・3で受験指導体制を確立する仕組みを整えた。併せて、より楽しく充実した学校生活を実現するために、中学の3年間は生徒一人ひとりにチューターを配置。クラス担任とは別の教員が学習面のアドバイスを行うほか、日常生活の悩みや不安に対応している。「今は、男女共に手をかけて引っぱり上げる教育でなければうまくいきません。ていねい、かつ細やかに生徒を指導する面倒見の良さは本校の特長です」。生徒と先生の距離が近く、コミュニケーションも活発。生徒の個性を生かしつつ、伸び伸びと過ごせるようバックアップしている。

感動ある学びを追求。人間的成長と総合力を養う

海外大学、国公立大学、早慶上理への進学を目指した進路指導にも力を入れている。ステージごとに異なる学習サポートを行い、長期休暇を活用した講座や講習、受験対策プログラムなども用意し、それぞれの進路実現を後押しする。「高2・高3で受験勉強に集中するためには、それまでの準備が大切。女子には段階的に積み上げる力が、男子には瞬発力がありますから、1期生の進学実績も期待できます」と近藤先生は話す。生徒には「高1までに自身の進路を決め、その目標に向かってがんばろう」と繰り返し呼びかけているそうだ。

今春、順天堂大学医学部に進学した生徒は、バスケットボール部の部員でインターハイにも出場した。「最後まで部活動に熱心に取り組んでいたので、現役では結果を出せませんでした。しかし、『どうしても医師になりたい』と1浪して合格を勝ち取りました。勉強は大事ですが、勉強だけでは不十分だと私たちは考えています」と近藤先生。同校が育てたいのは、気力や体力も含めた総合力だ。「生徒が人間的に成長できる学校でありたい。八雲学園は学力だけでなく、人としての総合力を身につける学校なのです」という近藤先生の言葉どおり、生徒たちは部活動にも積極的に取り組んでいる。部活動を通して得るものが大きいからだろう。

同校では、同様に文化体験や学校行事も重視している。月に1回設けている「文化体験の日」には美術鑑賞やミュージカル鑑賞をはじめ、博物館や美術館などさまざまな場所に出掛けて文化や歴史を探究している。「1か月に1回、心から感動、感激することで人間力を育てたい。失敗や挫折があっても、喜びがあればやる気が出ます。それを繰り返しながら、成長していってほしいと思っています」

年間を通して計画している学校行事も成長の場だ。昨年、今年とコロナ禍に翻弄されつつ、生徒と教員が一緒になって知恵を絞ってきた。体育祭、文化祭は予定どおり開催。やむを得ず延期した合唱コンクールも感染防止対策を徹底して実施した。「中止するのは簡単です。でも、あきらめるのではなく、どうすればできるかをみんなで考えています」と近藤先生。飛沫対策がネックになった合唱コンクールは、生徒が立つ位置の工夫やアクリル板の設置、さらには合唱が終わるごとに業者による消毒の時間を設けることで実現に結びつけた。高2が対象の九州への修学旅行も4月に実施した。生徒全員に折りたたみ式のアクリル板を持たせ、やはり感染防止対策を徹底し、5泊6日の旅を楽しんだ。

もちろん、日々の学校生活でも感染防止には細心の注意を払っている。昨年の一斉休校の後に、生徒全員の机にアクリル板を設置。個人用の消毒液とマスクケースも配布した。学校側の思いに応え、生徒も高い意識を持って感染予防に努めているそうだ。

世界の舞台へ。進化続けるグローバル教育

創立時からの柱であるグローバル教育も進化を続けている。卒業までに「CEFR」C1レベルへ到達することを目指し、高度な英語力が身につく授業を展開。英語教育の専門家をアメリカから招いて英語科教員を指導するなどして、生徒の英語コミュニケーション力を高めている。

海外研修も充実している。中3生は全員でアメリカ・カリフォルニア州サンタバーバラの研修施設「八雲レジデンス」で2週間の研修を行う。今年はコロナ禍で当初予定していた2月には行けなかったものの、ワクチン接種が進んで現地の感染者がごくわずかになったことから、11月以降に実施する方向で計画を進めている。ほかにも、高校生対象の夏休みの研修や高1対象の9か月プログラムなど、アメリカへの研修制度はいくつも用意されている。安全を確保するために、現地の情報を詳細に収集しつつ、コロナ後を見据えた取り組みを始めているという。

グローバルリーダーを「高い英語力を持ち、他国の文化を理解し、多角的にものごとをとらえることができる人物」と定義し、その育成を教育の根幹とする八雲学園。「世界の舞台で活躍できる生徒を育てたい」と近藤先生は述べ、そのためには夢を持つことが大事だと強調する。「コロナ禍で大変なことも多いのですが、夢や目標があれば、どういう状況にあっても突き進んでいけると思いますし、生徒にもそう伝えています」と前向きだ。

来年度の入試は例年どおりに実施する予定で、変更はない。「受験生の皆さんも健康に注意しながらがんばってほしい。お待ちしています」と結んだ。