WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

確かな英語力と、豊かな感性を育む6年間

中村中学校・高等学校

創立110周年を迎える中村中学校・高等学校。生徒が自ら伸びる教育を信念に、生徒がなりたい自分を探し、近づくための手厚いサポートを行っている。キャリアデザイン、ダイバーシティ推進など、時代のニーズに応じさまざまな取り組みを進めている同校。今回は中学校の英語教育を中心に、江藤健教頭にお話をうかがった。

中村中学校 江藤健教頭

世代を超えて広がるフルートの輪

中村学園の特徴の一つに、フルートがある。中1~中3までの3年間と、高1は選択制でフルートの時間が設けられており、20年以上続く同校の伝統だ。

「情操教育の一環として取り入れたのがフルートです。持ち運びがしやすく、どこでも練習できることなどからフルートを選びました。最初はみな初心者で、音が出るまでに時間がかかりますが、吹けるようになるとどんどん楽しくなっていくようです」。江藤先生は、導入の経緯をそう話す。

練習の成果は、秋に行われる「ぴっころコンサート」で発表。学年が上がるごとに演奏のレベルが上がっていく様子が歴然とわかるという。高2、高3でもフルートを続ける生徒や、大学、社会人になっても続けている卒業生も多く、謝恩会や結婚式などで演奏したり、留学先で演奏を披露する生徒もいるそうだ。そのため同校では、月2回程度OGのためのレッスンを行っている。また保護者からの声に応じて保護者向けのレッスンも行っており、世代を超えたフルートの輪が広がっている。

英語に自然に触れる機会を数多く用意

中村の英語教育は、6年一貫教育の優位性を活かして「読む」「書く」「聴く」「話す」の4技能をバランス良く伸ばすとともに、ツールとして使える英語力を磨くことを目標としている。

中学では週6時間の英語の授業のうち、1時間はネイティブ教員による英会話。クラスを2分割して少人数で行われるため発言する機会も多く、楽しみながら英語に触れることができる。

授業以外にも、同校ではさまざまな形で英語に親しむ工夫がなされている。一つはJETプログラム(※)から派遣されたアシスタント講師の存在。英語の授業のサポートだけでなく、体育の授業や部活動にも参加しており、普段の生活の中で英語が飛び交っている。

また、同校には毎日朝読書の時間があるが、週に1日「洋書の日」が設けられており、各自洋書BOXから好きな洋書を選んで読み進めている。1冊読み終えるとシールを与え、たくさんシールを獲得した人を「Reading Queen」として表彰している。

秋に行われる英語発表会(NAKAMURA English Day)は、校内が英語一色に染まる日。中1は物語の暗誦、中2は「国内Summer School」プレゼンテーション、中3は有名な演説の暗誦や外部スピーチコンテスト出場者の発表と、各学年それぞれテーマに沿って一生懸命取り組んできた成果を発表する。

加えて2019年4月には、英語の部屋〝PLAZA〟が開設された。PLAZAにはネイティブ講師が常駐するほか、英語に関する本や資料を用意。生徒が昼休みや放課後などに気軽に立ち寄り、英語での会話を楽しめる場所になるよう、整備を進めている。

こうした環境の中、生徒の英語力はどのくらい伸びているのだろうか。中学校では、英語力の進捗を客観的に把握するためにTOEFL Primaryテストを年2回受験しているが、中1の9月と中3・2月の結果を見ると伸びがよくわかる。

「現高1生の、CEFR(セファール※)でA2レベルに到達している生徒の割合を紹介しましょう。リスニングでは、中1・9月のテストでは32.1%だったのが、中3・2月には73.6%にアップ。リーディングでは中1・9月時点で6.2%に過ぎなかったのが、中3・2月には59.7%まで上がりました。この数字から、生徒の英語力が3年間で大きく伸びていることがわかると思います」と江藤先生は誇らしげに語ってくれた。

※JETプログラム=語学指導等を行う外国青年招致事業(The Japan Exchange and Teaching Programme)。外国青年を招致して地方自治体等で任用し、外国語教育の充実と地域の国際交流の推進を図る事業。
※CEFR=Common European Framework of Reference for Languages : Learning, teaching, assessment : 外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠。A1~C2まである。

グローバルに考え、ローカルで行動する「グローカル教育」

これからの時代を生きるためには、自己から他者へ、社会へと関心を広げていくことが必要だ。中村では、Global(世界・地球規模)に考え、Local(身の回り)で地に足をつけて活動できる教育を実践している。

まず中1では、社会科の深川めぐりを通じて、地元深川の歴史と文化を学ぶ。その後、田植え体験や、茶道・華道体験を通して日本文化に触れ、修学旅行で京都や奈良、さらには広島や沖縄を訪ねて日本への理解を深めていく。自らのアイデンティティを確立していきながら、グローバルな視野を身につけていくのが中村の国際教育です」と江藤先生は語る。

具体的が試みとして中2では、中1で体験した深川めぐりをもとに、外国人に地元深川を案内する「国内Summer School」を実施している。各グループに1人のネイティブ教員がつき、設定した歴史・文化・人物などグループごとに設定したテーマに沿って外国人を案内。最終日には英語でプレゼンテーションも行うプログラムで、「読む」「書く」「聴く」「話す」の4技能はもちろん、コミュニケーション力やプレゼンテーション力も身につけることができる。

さらに中2、中3の希望者を対象とした「海外Summer School」もある、8月の11日間、オーストラリア・ブリスベンやアメリカ・コロラド州デンバーの現地校などを訪問するプログラムで、現地学生の家にホームステイしながら生きた英語を体得。この経験をきっかけに、国際科(後述)に進学する生徒も多いという。

また同校では、多様な価値観を認められるダイバーシティの推進にも取り組んでいる。「入試方法にも、そうした考えが現れています。一般入試、特待生入試、適性検査型入試といった筆記試験に加え、芸術やスポーツなど多方面の努力を評価する『ポテンシャル入試』、英語力を測る『グローバル入試』等を実施。さまざまな価値観を持つ生徒が集まることで、お互いに刺激し合い、成長していく。そんな学びの場でありたいと思っています」(江藤先生)

生きた英語力を身につけ、世界に羽ばたく

中学の英語教育を通して、英語を好きになった生徒の進路としては「国際科」がある。高い英語力を磨くと共に、全員が英語圏の高校へ1年間留学。1校1名の環境で学び、生きた英語力と異文化体験を通して広い視野を身につけていく。

もう一つの「普通科」は、大学進学を目標に、質の高い授業と生徒一人ひとりの志望に合わせた学習方法で、確かな学力を身につけていくコース。放課後の課外講座や夏・冬期講習など、授業外のサポートや、AO・推薦に対応した小論文・面接指導など、充実の体制で生徒を合格へ導いている。

ところで英語=国際科と思われがちだが、普通科でも高レベルの英語教育が行われ、生きた英語を身につけることができる。国際科の生徒と触れ合うことで海外への興味が育まれるとともに、高1生対象のオーストラリア短期留学、高1・2年生対象のオーストラリア語学研修もあり、世界に目を向ける生徒も少なくない。

その表れの一つが、「トビタテ!留学JAPAN」への挑戦だ。これは文部科学省が2014年からスタートさせた海外留学支援制度で、2020年までの7年間で約1万人の高校生、大学生を派遣留学生として送り出す計画。目的意識と英語のプレゼン力等で選考されるこのプロジェクトに、同校は初年度から連続して日本代表を輩出しており、4年連続は都内の私立校でも数校のみ。加えて過去最多応募となった第5期生(2019年度)も2名合格、5年連続の快挙を達成した。 「かけがえのない経験をするチャンスを活かし、自らの課題に取り組むべく世界に飛び立っていった生徒たちの存在が、周りにいい影響を与えてくれています」(江藤先生)

なお、同校では2019年度から普通科の募集を再開。異なるバックグラウンドを持つ生徒が入学してくることで、さらなる活性化を期待している。

最後に江藤先生は、以下のように話してくれた。

「少し前になりますが、卒業式の答辞で、『中村は私たちにとって止まり木のような存在だった』と言ってくれたことが今も忘れられません。将来世界に大きく羽ばたくために、また社会に飛び立つ準備の場として、これからも本校は生徒一人ひとりと向き合い、人間として大切なものを育み続けたい。同時に、子どもたちがいつでも帰ってこられる場所でありたいと思っています」