私立中高一貫校

自ら考え、意見を持ち、
発信することのできる女性を育てる

恵泉女学園中学・高等学校

恵泉女学園中学・高等学校は1929年、クリスチャンである河井 道によって、キリスト教に基づく人格教育を行うため創立された。「聖書」「国際」「園芸」を教育の柱として、21世紀を強くしなやかに生きるために必要な「主体性」「多様性」「協働性」を育む教育を実践している。今春、校長に就任した本山早苗先生に、同校の教育内容や今後の取り組みについて話を聞いた。

礼拝で自らの思いを語る「感話」は、自分を見つめ、主体性を育む場だ

ICTに詳しい教員が教え合い
約900本の授業動画を制作

校長の本山早苗先生は、中学・高校時代を恵泉女学園で過ごし、大学卒業後は同校の英語教員として着任。さらに11年間副校長を務めた後、今年4月に校長に就任した。就任直後は新型コロナウイルス感染症の拡大予防措置に伴う休校期間とも重なり、生徒へのフォローとICT教育の環境整備に奮闘した。

同校では、早々に個人所有のデバイスを用いて教育活動を行うBYODの方向性を固め、オンライン授業に向けての取り組みを推進した。そこでは、ICT委員の教員が講習会を開き、教員同士が教え合いながら各教科の授業動画を制作。6月中旬までに同校のYouTubeチャンネルに約900本もの動画をアップし、Web会議サービスのZoomによるライブ授業も時間割どおりに行われるなど、緊急事態宣言下においても、ICTを活用した教育が素早く実施された。

休校期間中、生徒からはネット環境に関することから教科の内容に関するものまで、さまざまな質問が寄せられた。それらに応えるために、学校では質問専用アカウントを作り、担当以外の教員でもすぐに書き込みができるようにシステムを整備した。「普段の授業では発言が少ない生徒が積極的にコメントしているのを見て、ICT教育の利点をあらためて認識することができました」(本山先生)

Zoomで行うホームルーム等やICTを利用した教育が素早く実施された

思いを伝える「感話」が
自己を確立する土台を作る

本山先生は、新型コロナウイルス感染症の影響で混乱する教育現場のなかでの新校長就任について、このように話す。
「本校が創立された1929年は世界大恐慌の年でした。そして2020年、『新型コロナ大恐慌』ともいえる歴史に残るような年に校長に就任したことは、神様から『初心に帰りなさい』と諭されているような思いです」

同校では創立以来、「あなたはどう考え、どう行動するのか」を問う教育を行ってきた伝統がある。生徒が自ら考えることを促す取り組みとして、創立時から変わらず行っているのが、礼拝での「感話」である。感話は、生徒が日ごろ感じていることを原稿用紙にまとめて、ほかの生徒の前で発表する。これは6年間全生徒が取り組むもので、どの生徒にも年に数回、必ず発表の順番が回ってくる。内容は社会問題に対する自分の考え、クラブ活動での葛藤、家庭内の問題までさまざまだ。この感話を通じて、生徒たちは自分自身の考えを深め、主体的に生きていく土台を作っていく。これが同校のベースとなっており、教育の柱の一つ目である「聖書」ともつながっている。

また、教育の柱の二つ目の「国際」では、1990年から続けているアメリカ、オーストラリアでの留学プログラムがあり、キャンプや教会でのボランティア活動などを通じて、キリスト教の精神を学ぶ。一方で、今後はアジアの一員として、アジアの国々と交流を図っていくことがますます大切になるとの考えから、2018年にタイの学校との交流プログラムがスタートした。その契機となったのが、ACCU(ユネスコ・アジア文化センター)が主催する日本とアジアの教員交流プログラムである。

本山先生は、国際的な取り組みにおける今後の展望について、「ACCUでの教員交流の後、タイのナコンサワン県の公立中高一貫校との独自の交流が始まりました。互いの生徒がホームステイをして、母国語ではない英語でのコミュニケーションをはかり、料理や舞踊などの文化を学ぶ機会となっています。こうした取り組みを、今後もさらに広げていきたいと考えています」と話す。

タイの学校交流では生徒同士がコミュニケーションを取り、文化を学び合う

植物を育てる「園芸」から学ぶ
自然との共存、社会の在り方

教育の柱の三つ目の「園芸」では、中1と高1で週に2時間の必修授業を設け、年間を通してジャガイモ・小麦・大根・バジルの栽培、草花の花壇作りなどを行っている。生徒たちは小麦を脱穀してスコーンを作ったり、収穫した大根でふろふき大根を味わったり。様々な経験を通して、自然と命の大切さや、仲間と力を合わせて働くことの楽しさを学んでいく。これは「神を畏れ、人を愛し、いのちをはぐくむ」という同校の教育理念につながるものである。

また、園芸から派生したさまざまな活動にも取り組んでいる。まず、東日本大震災後の2012年に授業で育てた花の苗を被災地に届けるボランティア活動を始めた。また、仮設住宅の隣の土地を開墾して畑にする活動も行っており、授業で慣れている生徒たちは作業を手際良く進めてくれたという。

現在は、宮城県南三陸の歌津地区に毎年訪問し、有志でワカメ漁の手伝いをするプロジェクトを継続中だ。塩蔵されたワカメを校内で販売し、売り上げを歌津地区に寄付している。こうしたプロジェクトに参加したことで、地方行政の在り方や災害に強い街づくりに興味を持つ生徒も少なくなく、「園芸」での経験は卒業後の進路選択にも大きな影響を与えているようだ。

このようなさまざまな経験を通して、同校では生徒にどのような人になってほしいと考えているのだろうか。本山先生は「昨年、フィンランドで34歳の女性が首相になりました。フィンランドは、国連が発表する『世界幸福度ランキング』の1位を3年連続で獲得している国でもあります。日本では女性の社会進出はまだまだで、その上、世界一の長寿国にもかかわらず、幸福度はあまり高くありません。こうした状況を変えていくには、女性の活躍が必要不可欠です。恵泉の生徒には、自分らしさを生かしながら、自分の目標に一歩一歩進んでいくことで、もっともっと女性が活躍できる社会をつくっていってほしいですね」と語る。

最後に、本山先生は、受験生と保護者に向けて、次のようなメッセージを送ってくれた。
「恵泉女学園は、一人ひとりに神様がかけがえのない賜物を与えてくださっていること、また一人ひとりに果たすべき使命があると信じている学校です。皆さんには恵泉でそれを探し、夢をかなえていってほしいと願っています」

有志による南三陸支援活動は、先輩から後輩へ脈々と受け継がれている