私立中高一貫校

どんな状況でも学びを止めない。一人ひとりの個性を伸ばす教育

豊島岡女子学園中学校・高等学校

都内有数の女子進学校として知られる一方、建学の精神に基づいた独自の教育を大切にする豊島岡女子学園中学校・高等学校。ICT教育にも力をいれており、新型コロナウイルスの影響による休校期間中も、オンラインの活用で計画どおりに学習指導を進めることができたと言う。突然の休校にどう対応し、どのようにオンライン教育を展開したのか、さらには今回の事態を踏まえた今後のビジョンをどう描くのか、校長の竹鼻志乃先生に聞いた。

いち早く開始したオンライン授業。生徒からも高評価

初動の早さは抜きん出ていた。豊島岡女子学園では、当初は春休みまでだった休校要請が延長された4月初めにオンライン授業の実施を決定。教員が手分けをして準備を急ぎ、数日後には、「課題・動画配信による授業を始める」と生徒に伝えた。授業の取り組み方を配信し、13日からは、月曜から土曜までのオンライン授業をスタート。「生徒の集中力や目の疲れも考慮し、1つの教科の動画は30分以内。プリントアウトを前提としない教材を作り、普段の授業以上の負荷をかけないというルールで始めました」と校長の竹鼻志乃先生は話す。「新入生のご家庭の環境などを踏まえて、あえて時間割を組んだ同時双方向型のオンライン授業を選択しませんでした。画面の前に生徒を縛り付けることになりますから。高校生は、探究の授業でBYOD(Bring Your Own Device)を導入していたこともあって、スムーズにスタートできました」。BYODでは、ノートパソコンやタブレット、スマートフォンなど、生徒が所有する端末を活用。授業のほか、クラブや委員会で使っている生徒も多かったことから、オンライン授業への移行はスムーズだったそうだ。

「各教科で工夫して、オンライン授業を進められたので、遅れも出ていません」。当初使用していたプラットフォームの不調が続いたことから、途中からは学校ホームページの配信ページとの2本立てに変更。さらにその後、プラットフォームをMicrosoft Teamsに変えて、安定した環境でのオンライン授業を提供し続けた。「生徒や保護者の皆さんには、こうした変更に対応するハードルも乗り越えてもらいました。ただ、生徒は普段からICTに慣れているので、こちらが思うほど大変ではなかったようです」

オンライン授業を始めて3週間が経過した4月末には全校生徒にアンケートを実施し、在宅での学習状況を聞いている。習熟度を尋ねる問いでは、「授業を80%程度消化できている」と答えた生徒が最も多く、充実して日々の学習に取り組んでいる様子がわかった。「なかには『ずっと配信授業でもいい』と答えた生徒もいました。生徒たちが学習にかける思いは強く、休校期間中も一生懸命にがんばってくれました」と振り返った。

高校生はBYOD(Bring Your Own Device)を始めていたことから、オンライン授業への移行もスムーズに進んだ

休校中も工夫して伝え続けた、豊島岡の“当たり前”

オンラインの授業では、通常の授業以上に工夫が凝らされ、多種多様だったと言う。時には笑いを交えたり、最初に音楽を入れたりと、さまざまな味付けする先生も。画面越しの生徒が飽きないようアイデアを練り続けた。「生徒から活発に寄せられる質問にも、待っていましたという感じで丁寧に答え、授業の内容がさらに深められていました」。

5月の大型連休明けには、中学・高校の入学式をオンラインで実施。以降もオンライン授業は毎日続けた。実技教科や高1・2の探究の授業に加えて、同校の伝統である「運針」も同じように配信してきた。同校卒業生の先生たちが急遽集まり作製した運針動画だ。全校生が毎朝取り組んでいる運針は、白布に赤糸をひたすら通していく5分間の取り組み。一日の始まりを心静かに迎え、集中力を養うのに役立っている。新入生には運針道具を配送し、やり方を教える動画を配信した。「運針は豊島岡生の『当たり前』。大切な伝統ですから、まだ学校生活を経験していない新入生にも当たり前と思ってほしかった。朝8時15分から運針をして、授業に臨む新入生は多かったようです」と竹鼻先生は言う。

通常はプリントで配付している学年通信も中身を充実させ、オンラインで配信。学習や生活への不安の解消に努めた。担任とのオンラインでの個人面談では、お互いに顔を合わせることができて、安心につながったそうだ。「保護者の方が授業を生徒と一緒に見ていることもありました。いろいろな思いを持ちながらも温かく見守ってくださったと感じています」

白布に赤糸で縫う豊島岡生の当たり前の「運針」。

新しいやり方を考えて、今できることを前向きに

6月はオンライン授業を1週間続けた。大学受験を控える高3生には質問や相談のために自由に登校できる期間を設け、一方で、入学の記念撮影ができるようにと校門に入学式の看板を用意し、大勢の新入生の家族が利用したそうだ。6月中旬からはクラスを半分に分けた分散登校を開始。遠方から通う生徒もいるため、1時限から6時限まで授業を実施し、1日おきに登校する形にした。7月からは全校で通常どおりの授業を再開。生徒の健康と安全を守る準備を整えたうえで、第2波・第3波が来た場合は、態勢をスムーズに切り替えられるようにしている。

また、学校行事の多くが中止や延期に追い込まれるなか、新たな取り組みも始まった。運営委員を務める生徒たちが開催を目指して検討を進めている。「これまでのやり方にとらわれない新しい企画を考えてくれるのではないかと期待しています。生徒たちが知恵をしぼった新たな形で何とか実現させたい。上級生が今できることを一生懸命に考える姿を後輩に見せることも大切なことです」。毎年恒例のニュージーランドへの3か月留学はやむを得ず中止になったが、選抜された参加者のために、新たな計画を練っているところだ。

こうしたなか、学校の枠組みの変更も迫っている。2022年度からの高校募集停止だ。竹鼻先生は、「完全中高一貫のカリキュラムを編成するためです。6年間の成長の過程をこれまで以上に丁寧に、保護者と一緒に見ていきたい」と力を込める。中学の募集人数を増やすわけではないので、全体的な生徒数は今より少なくなる。「本校の良さは生徒一人ひとりの個性を認めて伸ばすこと。そのためにも少人数教育をより充実させます」

「あの子はこんなことができる、この子はこんなことができる、ではわたしは」と考えて、自分ができることを探す生徒が多いという同校。先生方は今回の休校を通じて、周りの生徒から刺激を受けるのが学校に来る大きな意味だと実感している。「難関大に進学する生徒も増えていますが、それは先輩のようにがんばれば、わたしも行けると感じるからだと思います」と話す竹鼻先生。最後に、来春以降の受験生へ向けて「豊島岡に来れば、一生懸命がんばれるもの、自分が誇れるものがきっと見つかります。一生の友達にも出会えます。入学した後のことをイメージしながら受験勉強をがんばってください。過去問の練習が大切です」とのメッセージを寄せてくれた。

多くの探究型プログラムに取り組み、授業でも探求活動を進めている
分散登校中はクラスを2分割し、新しい生活様式を意識して授業が進められた