私立中高一貫校

道徳教育を軸に、グローバル教育を加速

江戸川学園取手中・高等学校

「NEW江戸取」を掲げて改革を深化させる「江戸川学園取手中・高等学校」。近年は道徳教育を軸に、グローバルに活躍できる人材の育成をめざしている。附属小学校から入学する一貫生と、中入生や高入生も一緒になって切磋琢磨できる環境が整った同校の教育について、竹澤賢司校長に伺った。

広い地域から精鋭が集結
高い実績を持つ医科コースが人気

「規律ある進学校」として、心豊かなリーダーの育成を目指す江戸川学園取手中には毎年、茨城県内ばかりでなく東京・千葉・埼玉など県外からもたくさんの新入生が入学している。今年(2020年)度は164の小学校から233名(一貫生を含むと313名)が難関をくぐり入学した。

竹澤校長によると、2月11日の新入生登校日には、遅刻や欠席はまったくなく、9時の集合時間に全員が集まったとのこと。「164校の小学校からやってくる生徒は、各小学校を代表して入学しているという自覚を強く持っています」と続ける。

また、昨年は、医科系に特化した説明会を水戸(茨城県)・四谷(東京都)・新浦安(千葉県)の3か所で開催した。これにより「医科ジュニアコース(第1回入試)」の受験者数は、前年の187名から238名へと50名以上も増加。「心力・学力・体力の三位一体の教育」と多彩なプログラムを求めて入学する生徒が増えていると言う。

2014年に開校した江戸川学園取手小学校からの一貫生の存在も、中学から入学する生徒にとっては大きな刺激になっているという。昨年の1期生63名に続いて、20年には80名の一貫生が入学した。

「小学校では、リーダー性を引き出すプログラムが充実しています」と竹澤校長が語るように、一貫生は小学校において6年間の充実した道徳教育を経験し、主体的な生き方を育んでいる。例えば、自分のなかのリーダー性を引き出す「7つの習慣」を小学校でのカリキュラムに導入。「自分でえらぶ」(責任を持つ)、「おわりから考える」(計画を立てる)、「だいじなことからはじめる」(まず宿題をする)といった習慣を、道徳教育のテキストやプログラムに落とし込むことで、生徒の内面の成長を促しているのだ。

こうした一貫生と初めて一緒に学んだ昨年入学の中入生は、一貫生から大いに刺激を受け、勉強面だけでなく生活面や内面にも大きな変化が見られた様子が伺えたという。竹澤校長も「一貫生は『7つの習慣』の学びを通じて、相手の良いところを認めあうことができるようになっているのでしょう。これにより、中入生も安心して、一緒に切磋琢磨できます。隣の席を見れば、勉強はもちろん、部活動や生徒会活動にも一生懸命な生徒ばかり。この相乗効果のある環境こそ当校の持ち味です」と語る。

中学からの「道徳教育」のプログラムはさらに深化する。校長、副校長、部長教員が生徒へ定期的に講話を行い、生徒たちはその講話を基に議論を重ね、感想文を提出していく。

竹澤校長は中1生に年6回、講話を実施している。昨年は野口英世の「初志貫徹」や孔子の「論語」、リンカーン、福沢諭吉などを取り上げた。「12歳、13歳という子どもたちの年齢に合わせて、過去の偉人たちが同じ年ごろでどういう考え方をしていたのか、どういう生き方をしていたのか。そこに軸足を置いて話しています」と語る。

アメリカ・メディカル・ツアー

医療やSDGsなど多彩で
魅力的な海外研修が充実

「NEW江戸取」を掲げて、43年目の改革に取り組む同校は、現在、グローバルリーダー人材の育成に向けて、海外研修にも力を入れている。

2019年に始まった「アメリカ・メディカル・ツアー」では、医師をめざす中高9名の生徒が5日間、カリフォルニア大学サンディエゴ校で海外研修を行った。

実際のプログラムでは、現地校の医学教授の特別医療講話や研究員とのパネルディスカッション、現地医学部生とのキャンパスツアーなど、医療に特化した5日間になった。

「本場の医療関係者からの直接指導や、日本人研究員による、アメリカと日本の医療の違いについてのレクチャーとディスカッションなどを実施しました。訪問先に所属している当校の卒業生が2、3名関わってくれたため、在校生にとっても大いに刺激になったようです」と竹澤校長。参加した生徒たちからは、アメリカの最先端医療の最前線の現場での研修を通じて、「自分でくよくよ考えるよりも、思い切って行動してみることの大事さに気づきました」と、挑戦することの大切さを実感した様子がヒシヒシと伝わってきているという。

一方、2018年に始まり現地の貧困や飢餓などについて主体的に学ぶ課題解決プログラムが、これまでに2回行った「SDGsスタディーツアー in カンボジア・ベトナム」だ。

昨年参加した中高24名の生徒は1週間、カンボジアの小児病院や孤児院訪問、ベトナム戦争の枯れ葉剤の散布被害を受けたグエン・ドク氏との懇談会などを通じて、世界の抱える課題に真剣に向き合った。こうした研修では、事前学習から事後学習までを通じて、報告書や小論文が課される。現地での中間報告書では、将来医師をめざす生徒が「過酷な環境で働く人々や孤児院の子どもたちとの出会いを通じて、人を笑顔にする医師になりたいという気持ちが一層高まった」と記すなど、全過程を通じて、問題意識や気づきが芽生えるプログラムになっている。

実際に現地の小児病院や孤児院を訪れ、発展途上国の現状を学ぶカンボジアでのSDGsスタディーツアー

 さらに今年からは、もし新型コロナウイルスの世界的な蔓延がなければ、新たな海外研修の試みとして、中3・高1を対象にした3カ月間のオーストラリア中期留学も予定していた。竹澤校長は「まずは10名以内の人数に絞り、各生徒は現地留学校のプログラムに沿って学習していきます。これまで短期留学は1カ月以内でしたが、3カ月というもっと長い期間でさらに深い学びにつなげてもらいたい」と話してくれたが、この新しい試み・チャレンジについては、来年以降に持ち越しとなる。

多彩な海外研修を展開できる背景には、教師も主体的に活動できる環境が同校にあることも大きい。英語科以外の教師が率先して海外研修を引率するなど、学校全体が積極的に動ける雰囲気になっている。

竹澤校長は「学校評価や教師への評価も期間ごとに見直し、第三者評価、内部評価、保護者評価と改革を実施しています。フレックスタイムやノー残業デーも導入し、教師への働き方改革も深化しています」と語る。

また、各学校が緊急対応を迫られた今年のコロナウイルス禍の休校期間中の対応については、以前からICT教育に力を入れていたことが同校にとっては功を奏した。3月中の課題配信、4月からの授業動画配信、さらに5月からは双方向のオンライン授業のできる環境を保護者の協力も得て導入し、年度の学習進度計画に遅延を招くことなく無事に乗り切ることができた、という。教員たちは、動画の撮り方映り方から、ICTの環境面など色々と試行錯誤しながらの対応で大変だったとのことだが、臨機応変に、生徒のために何ができるかを教員全体で考え抜き迅速に提供する、そういった高い志を持った教員が数多くいることこそが、まさに江戸川学園取手中高の大きな強みだと言えるだろう。

生徒が主体的に選べる
実践的なプログラムが豊富

科学の知識やその活用能力を競い合う「科学の甲子園」全国大会への切符を手にした生徒たち

竹澤校長は、「通常授業での学習面はもちろんですが、それ以外でも自分が興味を持った分野を深堀りできるような環境も揃っていることが、生徒の伸びる力につながっています」と話す。

こうした一連の取り組みにより、20年度は筑波大学医学群医学類に8名もの合格者を出した(4年連続全国1位)ほか、東京大学の推薦入試でも4年連続合格といったようにすばらしい進学実績を残している。そのほか、国公立大学120名、医学部医学科に関しては私立大学を含め合計99名が合格(全国15位)し、前年の77名を大きく上回った。

「当校では小学校からだと12年間、中学からでも6年間、一貫して充実した道徳教育と、多彩なプログラム、実践的カリキュラムを実施しています。それらを通じて、入学時点で目標に遠い生徒でも、本人の意欲と努力次第で東大や医学部をめざせるチャンスを大いに高めることができるのです」と、竹澤校長は力強く語ってくれた。さらなる同校の躍進にはこれからも注目だ。

4月に完成した「Sakura Arena」