WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

多様な体験活動が育む、自ら考え決める力

獨協埼玉中学校・高等学校

埼玉県越谷市に、約8万平方メートルもの広大なキャンパスを持つ獨協埼玉中学校・高等学校。恵まれた環境の中で、多様な体験活動をベースに「自ら考え、判断できる力」を育む教育が展開されている。併設大学との連携の下で生徒たちが研究活動に取り組む「獨協コース」など、時代を先取りした取り組みも注目を集めている。

中学3年間を通じて行われる多様な体験活動

入学後、早い時期にコース分けを行う中高一貫校が多い中、同校では高2で文理選択を行い、高3から5コースに分かれるシステムを採用している。その狙いは、生徒たちに自身の興味関心や適性をじっくりと見極めさせること。「中学生の段階では、自分が何をやりたいのか、分からない生徒も少なくありません。本校の生徒たちには、幅広い知識と教養を基に、自分自身の意思で確かな進路を選んでほしいと考えています」と副校長の村岡健二先生は語る。

6年間のカリキュラムは、生徒たちが進路を「自ら考え、判断」できるよう、体系的に組み上げられている。土台となるのは体験活動。中学3年間を通じて生徒たちはさまざまな活動に参加し、学ぶことや働くことへの意識を深めていく。

中1は、学校のそばにある田んぼで「稲作体験」を行う。春に苗を植え、生育の様子を観察し、秋には収穫した米を調理して食べる。生徒たちは、理科や社会科、家庭科などの教科で得た知識も生かしながら、「食」を取り巻く諸課題への問題意識を深めていく。また、中2の「職業体験」では上野のアメ横を訪れ、商品を売ったり、お店の人にインタビューをしたりする。さらに、中3の「福祉体験」では、自ら施設の人などに連絡を取り、ボランティア活動に参加する。

「本校では、理科の実験も年間30回ほど行います。今は、スマートフォン等を使って、何でも簡単に調べられる時代。だからこそ、安易に結論を求めず、体験を通じて自身の頭で深く考えられるようになってほしい」と村岡先生は語る。

「AIの時代だからこそ、自ら考え、判断する力が重要」と語る副校長の村岡健二先生
中1が「稲作体験」を行う田んぼは、学校のすぐそばにある

理解力と表現力を生み出す「言語力」の育成

「自ら考え、判断する力」を養うもう一つの柱が、言語力の育成に向けた「言語活動」の数々だ。生徒たちが日頃から活字に親しみ、言語を介して理解する力、表現する力を高める仕掛けが、6年間の学びに散りばめられている。

例えば、中学校では1年次から書籍や百科事典、電子辞書、インターネット等を使って情報を集め、レポートにまとめる学習が各教科で展開されている。こうした課題を通じ、生徒たちは情報を正確に読み取る力、客観的に表現する力などを高め、3年次にはその集大成として「卒業論文」も作成する。

これら言語活動を支えているのが、約6万冊の蔵書を誇る図書館だ。2名の司書が常駐し、朝読書で読む本のセレクトから卒業論文での情報収集のやり方に至るまで、全面的にバックアップする。

これら体験活動や言語活動を通じて、「自ら考え、判断する力」が高められた結果、ある日突然、学習のスイッチが入る生徒も少なくない。「目的が明確になったことで、急激に成績を伸ばす生徒もいれば、特定のテーマに対し学問的な教養を深めていく生徒もいます。ある生徒は、ドイツの移民問題と教育制度に興味を持ち、『獨協コース』へ進んで卒業論文のテーマにしました」と渉外担当の酒井直樹先生は言う。

「獨協コース」は併設大学への進学を前提としたコースで、大学に通って講義を受けたり、1万6千字以上の卒業論文を執筆したりと、大学での学びを先取りしたカリキュラムが組まれている。この他に、「文系Ⅰ」「文系Ⅱ」「理系Ⅰ」「理系Ⅱ」の4コースがあり、一定条件を満たせば、併設大学への推薦を保持したまま他大学を受験することも可能だ。そうした恵まれた条件の下で難関大学にチャレンジし、合格を勝ち取る生徒も少なくない。

「促成栽培ではなく、6年間をじっくりとかけて生徒たちを育てていきたい」と言う酒井直樹先生
同校自慢の図書館。入口には、話題の本を紹介するコーナーなどが設けられている

多様な機会を通じ、実践的な力を高める英語教育

創立以来、「語学の獨協」と呼ばれてきた同校では、英語教育にも力を注いできた。2017年度からは、「先進英語プロジェクト」をスタートさせ、6年間を見通した体系的な英語教育が展開されている。

中1では「リスニングマラソン」を通じて膨大な量の英語を聴き、中2では河口湖畔での「American Summer Camp」に参加して、英語漬けの2泊3日を過ごす。また、中3では英語の多読を行い、英語でのプレゼンテーションにも挑戦する。さらに、高校進学後は英語でのスピーチコンテストや小論文作成なども行い、インプットとアウトプットをバランス良く行いながら、実践的な英語力を養う。

希望者は、短期間の「海外語学研修プログラム」に参加することも可能だ。留学先は、中学生がニュージーランド、高校生がアメリカ、オーストラリア、ドイツとなっており、それぞれ10日~3週間程度、ホームステイをしながら現地校の授業に参加する。

「体験」を土台として問題意識を深め、「自ら考え、判断する力」を高めていくプロセスは、英語教育も同じだ。「海外留学を通じ、自分の英語がいかに通じないか、自分がいかに教養不足かを痛感することで、本気で英語を学ぼうとする生徒もいます」と村岡先生は語る。

広大なキャンパスには、300mのトラック、サッカー・ラグビー場、野球場、テニスコート(7面)などがある
30台以上のパソコンを配備したコンピュータルーム。調べ学習などで活用されている